不平文士の節酒日記~ADHD 死闘篇

アルコール使用障害とADHD に立ち向かいつつある技術系会社員のブログ

『スチームボーイ』

「この作品は劇場で見るべき」という言いまわしは使い古されたものですが、この映画については敢えてそう言いたいと思います。
日本アニメの伝統的文法に則った上での、この凄まじい「動画力」に太刀打ちできる作品は、当分……おそらく10年やそこらの間にはあらわれないのではないでしょうか。
巷ではあまり評判が良くないようですが、少なくとも大友克洋フィルモグラフィーの中では、完成度も娯楽度も文句なく最高だと思います。
文句をつけている人々は、そもそも大友に期待し過ぎているのではないでしょうか。劇場公開版の『AKIRA』を最後まで観たことがある人ならば、何が言いたいのかわかると思いますが……。
ストーリーは冒険活劇とライトコメディと文明批評が混じり合った、宮崎駿未来少年コナン』によく似た印象のもので、笑えるシーンも結構あります。大友特有の毒は薄めです。
もっとも、映像に圧倒されてしまったのか、劇場でケタケタ笑っていた観客はわたしだけでした。ちょっと恥ずかしかった。
おたく的な感想を付け加えると、スコットランドヤードの上陸シーンは宮崎駿『名探偵ホームズ』の有名なモブシーンをなぞったもので、「スチーム城」は『さらば宇宙戦艦ヤマト』の白色彗星帝国、エンディングは『オネアミスの翼 王立宇宙軍』を思い出させます。
オハラ財団とスカーレットの設定は、『新機動戦記ガンダムW』のロームフェラ財団とリリーナ・ドーリアンを連想させたりして。
しかし、台詞は多少理屈っぽいし、シーンのテンポも速すぎて、小さな子ども向きではないことは確かです。
9/3上映終了なので、未見の方はお早めに!