「味の素」によるアンモニア製造革命
安彦さんは、「僕が、ガンダムをいちばんわかっているんだ…!」と誤解していることに気がついてしまった
先日「安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN 展」を観に行って、つくづく自分はTHE ORIGIN を途中から見誤って(というか見限って?)いたんだということに気が付き愕然としました。
安彦さんは自分が誰より「1st ガンダム」を理解していると思い込んでいますが、少なくとも富野監督にとってのガンダムをよく(いやまったく)わかっていない。その証拠に、キャラクターレベルで、富野さんの思い入れと安彦さんの思い入れは見事なまでに食い違っており、その結果、物語の構造自体が異なってしまっているのです。
富野監督にとってガンダムとはまずもってシャアの物語、キャスバル・ダイクンの貴種流離譚・復讐の物語であり、アムロは物語を駆動するための軸、ホワイトベースは何故か皆が(毎週)そこに群がってくる空虚な中心です。敵であるジオン軍、とくにギレン以外の面々に至っては、その場限りの狂言回し的な存在でしかない(ガルマやドズル、キシリアや女性キャラの描写に顕著)。そして富野にとってガンダムは「殺伐とした、冷たい世界」。誰もわかりあえることなどない。
安彦さんにとっては逆に、ガンダムはアムロの成長物語であり、ホワイトベースクルーの集団劇であり、ザビ家の全員を含むジオン軍の多くの面々もそれぞれの確固とした根拠を持って群像劇に参加している。それに対し、ジオン・ダイクンやシャア、セイラ、あるいはミライといった「王族・貴族」の方が、物語を駆動するために無理めの道化を演じさせられている。安彦にとってガンダムは「信じられるものがある、やさしい世界」。人はわかりあえる。
『機動戦士ガンダム』がその他の富野ガンダムや安彦の『THE ORIGIN』と異なって奇跡的なバランスを保っていたのは、このふたつの全く相反する価値観が同居し、それらが混ざり合い、どちらにも偏らずに描かれた結果なのだと、今は思えるのです。
『「百合映画」完全ガイド』アニメ映画編
31本のレビューのリストを作り29本についてコメントしたでげす。
「将来の終わり」さんが半分以上の18本を書いているので、他の書き手のところにだけ色を付けてみました。
この本、目次に作品名がなく、索引もついていないという、ガイドとしては欠陥商品だと思います。
そしてわたしはなぜ担当編集者みたいなことをしているのか(笑)。
外国映画は多すぎるのでパス。21世紀日本映画(59本)は気が向いたらやるかもです。
No. | タイトル | 製作年 | 筆者 |
自分の鑑賞歴 |
評の評価 |
メモ |
282 |
のび太の鉄人兵団 |
1986 | 将来 |
あり |
○ | 俄然2011年公開のリメイク版というのに興味が湧いた |
283 | 少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録 |
1999 | 将来 | あり | ○ | 思い入れをぎりぎり踏みとどまった感じだがガイドとしてはネタバレし過ぎでは? |
284 | それいけ! アンパンマン ロールとローラ うきぐも城のひみつ | 2002 | 鶴田 | △ | 文章としては面白いのですが…なんか愛がないような… | |
285 | マイマイ新子と千年の魔法 | 2009 | 将来 | ○ | 文のまとめ方がちょっとヘンだけど | |
286 | アナと雪の女王 | 2013 | 中村 | あり | ○ | 妥当な批評。左部レイアウト乱れあり |
287 |
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] |
2013 |
将来 | ○ | これも敢えてみなくて良さそう… | |
288 | 思い出のマーニー | 2014 | 鶴田 | ○ | ちょっと興味を惹かれた | |
289 | たまこラブストーリー | 2014 | ふぢの | △ | わたしにはハイコンテクストすぎます | |
290 |
エルサのサプライズ |
2015 | 中村 | そのうちみたいので未読 | ||
291 | インサイド・ヘッド | 2015 | 中村 | △ | 中村さんは全般的にネタバレ批評が多い | |
292 | ガラスの花と壊す世界 | 2015 | 将来 | ○ | ダメ作品らしい | |
293 | ハーモニー | 2015 | 将来 | ○ | みなくて良いことがわかった! | |
294 | 花とアリス殺人事件 | 2015 | 高橋 | △ | 面白そうで興味は惹かれるのですが、この短文に映画ジャーゴンふたつが入っているのは辛い | |
295 |
The School Idol |
2015 | 中村 | △ | うーん、単なるあらすじのような気が? | |
296 | ポッピンQ | 2016 | 将来 | ○ | かなり辛辣な見解 | |
297 | 映画マイリトルポニー プリンセスの大冒険 | 2017 | 将来 | ○ | ウェルメイドっぽいですね | |
298 | あさがおと加瀬さん。 | 2018 | 将来 | ○ | これもみないかな | |
299 | ANEMONE / 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション | 2018 | 将来 | ○ | 前編があまりにアレだったので見損ねてしまった映画。観ておくべきだった | |
300 | インクレディブル・ファミリー | 2018 | 将来 | △ | 予備知識がない人には些か不親切 | |
301 | 劇場版 フリクリ オルタナ | 2018 | 将来 | ○ | ほぼ罵倒ですが | |
302 | シュガー・ラッシュ オンライン | 2018 | 中村 | ○ | これは面白そう! | |
303 | リズと青い鳥 | 2018 | 将来 | ○ | 最大級の絶賛 | |
304 | 若おかみは小学生! | 2018 | 将来 | ○ | 「大傑作」だそうなのでみます | |
305 | アナと雪の女王 2 | 2019 | 中村 | そのうちみたいので未読 | ||
306 |
–永遠と自動手記人形– |
2019 | 関根 | △ | 本書的には多くの字数を費やして熱く語られているが、特にみたくはならない | |
307 |
劇場版 響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~ |
2019 | 中村 | △ | すごく良さげなんですがやっぱりネタバレし過ぎなんでは | |
308 | フラグタイム | 2019 | 将来 | ○ | 愛ゆえの苦言のようである | |
309 | BLACKFOX | 2019 | 将来 | △ | 100分で尺が足りないのかな | |
310 | 僕らの7日間戦争 | 2019 | 将来 | ○ | みたい | |
311 |
サンシャイン!! The School Idol Over the Rainbow |
2019 | 中村 | △ | 興味を引かれるフックがなかった。 | |
312 |
劇場版 |
2020 | 中村 | ○ | みてもいいかな、と思いました |
『「百合映画」完全ガイド』20世紀日本映画ぶん
ちょうど一週間前、7月5日に始めた薬(コンサータ)のおかげで短文なら持続して読める程度にアタマの中が回復してきたので、リハビリを兼ねてレビューをしてみたいと思います。
お題は先月6月25日発行の星海社『「百合映画」完全ガイド』。
あとがきによれば「平均年齢が20代半ば程度のこわっぱ(自称)たち」8名(コワッパー8……すいません、つい……)による、国内外の312本の劇場公開映画(一部「にっかつロマンポルノ」作品も含む)についてのレビュー集です。
テーマ、本数ともに前代未聞であり、その意気やよし、と言うべきでしょう。
まずは、20世紀日本の映画に絞って32本をリストアップし、そのうちの18本についてメモ程度に感想を書いてみました(評価はやや辛目です)。
No. | タイトル | 製作年 | 筆者 | 鑑賞の有無 | 評価 | メモ |
1 | 港の日本娘 | 1933 | ふぢの | ○ | 興味深い | |
2 | 花つみ日記 | 1939 | ふぢの | △ | 文章は悪くないが空襲の年度を間違える致命的ミスが | |
3 | 野戦看護婦 | 1953 | ふぢの | △ | 当時のみんなに兵役経験があるわけではない(男性でもそうだが、特に女性にはない)。一般教養不足 | |
4 | 卍 | 1964 | ふぢの | △ | 業界内ハイコンテクストな話題は同人誌に留めておいて欲しい | |
5 | 美しさと哀しみと | 1965 | 児玉 | ○ | みたくなった。映画ガイドの見本といえる好文章 | |
6 | 残酷おんな情死 | 1970 | ふぢの | |||
7 | 火星の女 | 1977 | ふぢの | |||
8 | 悲恋物語 | 1977 | ふぢの | |||
9 | Keiko | 1979 | ふぢの | |||
10 | 風たちの午後 | 1980 | ふぢの | ○ | △ | 不親切。内容は完全に忘れているが再見する気にさせられない |
11 | 神田川淫乱戦争 | 1983 | ふぢの | |||
12 | セーラー服 百合族 | 1983 | ふぢの | |||
13 | OL百合族19歳 | 1984 | ふぢの | ◎ | ○ | 「携帯電話をぶん投げる」? 当時,携帯なかったんだけど… |
14 | イみてーしょん、インテリあ | 1985 | ふぢの | |||
15 | クララ白書 少女隊PHOON | 1985 | ふぢの | |||
16 | 恋文 | 1985 | 高橋 | ○ | ちょっとみたくなった | |
282 | ドラえもん のび太の鉄人兵団 | 1986 | 将来 | ○ | ○ | 俄然2011年公開のリメイク版というのに興味が湧いた |
18 | 猫のように | 1988 | ふぢの | ? | ○ | 文章は不安定ながら再見?したくなった |
19 | りぼん RE-BORN | 1988 | ふぢの | ? | ○ | 小説版を読んだのだったか、映画はみたのか、忘れてしまいました…… |
17 | 1999年の夏休み | 1988 | 将来 | ◎ | ○ | 『デーミアン』にこだわりを感じます |
20 | 櫻の園 | 1990 | ふぢの | ◎ | △ | 思い入れ過多のあまりか、記述が偏っていて情報不足 |
21 | TOKYO BLOOD | 1993 | ふぢの | |||
22 | 愛の新世界 | 1994 | ふぢの | |||
23 | ナチュラル・ウーマン | 1994 | ふぢの | ○ | ☓ | なんと中島『櫻の園』ひろ子への言及なし |
24 | 本番レズ 恥ずかしい体位 | 1994 | 牛久 | ☓ | 「百合」についての言及なし | |
25 | ルビーフルーツ | 1995 | ふぢの | |||
26 | KOKKURI こっくりさん | 1997 | 牛久 | ☓ | 「百合」についての言及なし | |
27 | バウンス ko GALS | 1997 | 牛久 | ☓ | 「百合」についての言及なし | |
28 | 落下する夕方 | 1998 | ふぢの | |||
283 | 少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録 |
1999 | 将来 | ○ | ○ | 思い入れをぎりぎり踏みとどまった感じ だがガイドとしてはネタバレし過ぎでは? |
29 | ギプス | 2000 | ふぢの | |||
30 | LOVE / JUICE | 2000 | ふぢの |
全体的に校閲がなっておらず、新潮社に次ぐ実力の校閲部と音に聞こえた講談社の子会社の仕事とは到底思えません。
もっとも分量を書いている「ふぢの」さん自身が同人誌のノリを引きずったままで編集を担当していたこともあるでしょうが、おそらくは星海社の担当編集者である石川詩悠が、本来自分たちがやるべき仕事を素人に丸投げし、やっていなかったということでしょう。
続きは気が向いたらやるかもです。