2004-06-01 今日の渡辺多恵子 萩尾 読 マルコのプリズムシリーズ1『たて・よこ・ななめプリズム'80』(小学館、1983)より 「白い冬のページ」(初出・別コミ1979、11月号) わたしの狭い知見の中に限れば、もっとも忠実に萩尾望都に追従した世界を舞台にしたものでありながら、渡辺多恵子のどうしようもないほどの優しさが、これ以上なく濃い密度で顕れている作品です。どうしたって『トーマの心臓』を思い起こさせる高い橋の上で、母を失い、父も家に帰らない少年が、『ポーの一族』を思わせる闇の能力を持つ少年と出会って物語がはじまります。たった29ページしかないのですが、これを超える美しさを持つ29枚を、彼女はもう二度と描けないに違いありません。短編漫画とは、作家にそういう残酷な業を科すものだと、わたしは思っています。