不平文士の節酒日記~ADHD 死闘篇

アルコール使用障害とADHD に立ち向かいつつある技術系会社員のブログ

『フォッグ・オブ・ウォー〜マクナマラに学ぶ11の教訓』

(正式な邦題は『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』)
アカデミー賞を受賞したドキュメンタリーフィルムで、六本木の乙女小屋で観ました。現在、渋谷のユーロスペースでレイトショー中。
「人間コンピュータ」の異名をとったマクナマラ元国防長官は、撮影当時で85歳ということですが、論旨明晰、背筋はしっかりと伸びていて、フォード車のハンドルも自分で握っています。
何ヶ月か前に、現在80歳になる村山富市元首相を見たときも思いましたが、人間、年齢じゃありませんね。
タイトル*1は、戦争というものは複雑で、個人が見渡すことはできないという意味だそうです。
イラク戦争の理由を「石油利権」だとか「軍産複合体」とか決め付ける人がいますが、実際はそんな単純なものじゃないのだろうと思います。
また、東部アメリカ人の持つ理想主義が南部の単独行動主義と結びついたという点では、ベトナム戦争はじつにイラク戦争と似通っていると思います。
彼が国防長官だった当時、ベトナム増派につながった「トンキン湾事件」の有名な雷撃が実は無かったという話は、「テロとの戦い」にまつまる様々な隠蔽や情報操作を思い起こさせます。
太平洋戦争中マクナマラの上官で、キューバ危機の時は部下であったカーティス・ルメイは、やはりストレンジラブ教授だったのかも知れないと思わせる証言もあります。
よくマクナマラと対比されるラムズフェルドは、この映画を見たのでしょうか。もし見たのならば、いつの日かぜひとも感想を聞きたいものです。
ラストシーンのテロップは、マクナマラ人間性と戦争への反発を極めて効果的に伝える、胸に迫るものでした。
テロップで思い出しましたが、日本の現首相も『ディープ・ブルー』を見たそうで、「素晴らしいね!」とか何とか発言されたそうです。
はたして、彼は最後までちゃんと起きていたのでしょうか。
捕鯨再開を悲願としている水産庁は頭に来ていると思うんですが。

*1:このイディオムは、シミュレーションゲームの名作である『スコードリーダー』のルールブックで、敵がどこにいるかわからない状況を再現するルールの章立てにも使われていたと思います。