不平文士の節酒日記~ADHD 死闘篇

アルコール使用障害とADHD に立ち向かいつつある技術系会社員のブログ

「増補アル中地獄(クライシス)」 邦山照彦

1989年に出版された本書を、その数年後、たしか新宿駅側の古本屋で、半額で買い求めました。
当時、まだ学生で実家に住んでいたわたしは、アルバイトや偶然手にした印税収入のほぼ全てを、安酒に注ぎ込む生活をしていました。アルコールの量で計れば、今の2倍近くを飲んでいた時期もあったと思います。
中島らもに「今夜、すべてのバーで」といういい小説があって、その中に「久里浜式スクリーニングテスト」という、アルコール依存症の簡易調査方が載っています。実は当時のわたしは、その小説に出てくる主人公よりも点数が高かった(アルコール依存症である疑いがきわめて濃厚だった、ということです)。
この本も、手に入れたときは熟読しました。飲みながら読んでました。
いくつかいい文章を引用してみます。
「私はアル中の真最中、何回となく断酒に挑み、禁断症状を苦しみ、どうして自分だけがこんなにひどい目にあわねばならないのだろうと、己を哀れんだものである。酒に狂った頭では、自己の肉体を痛めつけながら自己憐憫するという"身勝手な"思考しかできないのである」
「肉体の病気も、精神の狂気も、自分自身で気づいていれば良い。自分の体や心が変調を来していることに気づけば、労りの心が芽生えるからだ。しかし困るのは、「自分は健常者だ!」という、頑固な自負心を抱いている人だ。そのような人は、自分も又"患者"であり、世界そのものが狂っているのだという危機感にいつまでたっても目覚めようとしないのだ」
そして10年後、また飲みながら読んでいるわたしがいるわけですが。
この増補版、あとがきが素晴らしいのです。むかしこの本を読んでいいと思った人は、この7頁のためだけに購入するべきだと、声高に主張します。たった1050円、ビール4本分に過ぎません。