日本女性学会のワークショップ?「『ジェンダーフリー』『バックラッシュ』を再考する」に行ってきた
散歩しながらお茶の水女子大へ。前に来たのは『エヴァンゲリオン』をフェミ的に読みとくという、かなり無理のある企画だったような記憶あり。あの時も小林福久子先生来てたよなー。
パネラー3名は皆、はてなダイアラー。偶然ではない。
id:yamtom 声を聞く限り、相当に攻撃を警戒していた模様。雑誌「We」への(低い)評価について口を滑らせかける。主張はいつも通り。
id:discour 主張はいつも通りの行政/学者/中央批判。その他、寸劇や男の料理教室の隆盛やバックラッシャーの浸透戦術など地方の実態を暴く*1。
id:seijotcp 2ちゃんねる統計を駆使した資料は今回のパネラーの中で、ほとんど唯一の「あたらしい」意見提議だったような気がする。
あと全員、15分と宣言した時間をオーバー。けしからん。
コメンテーターは5名。
スピリチュアルシングルイダさん、忙しい自らの活動現状を披瀝。5分は無理と最初から宣言していたが横のid:discour より度々督促を受ける。それと、会場から声援を送るイダファンもマナーがなってないぞ。
井上輝子さん、わりと本音を吐露。「ジェンダーフリーという言葉は自分では使ってないし男女共同参画という言葉もあんまり好きではない」。好感度大。
金井淑子さんは最近の研究を発表。クレーマーは相手にしてらんないよオーラ出まくり。発表時間は厳守。
細谷実さん、すでに対話はあきらめ気味ながら、応答しようとの努力はしていました。5分を待たずに「時間無いから」と終了。そこにメッセージを読み取りましたよ。
オンライン参加の小山エミさんid:macska 、声を初めて聞きました。設備問題で聞き取りにくかったですが、文章とは違いやわらかな語り口。仰ることはいつも通りごもっとも。
会場からのご意見では「タイトルに偽りあり。バックラッシュの話はどこに?」という声が。確かに、再考というより「ジェンフリ叩き」「バックラッシュ」なんてもう遅れてる、みたいな話しでしたね(あ、でも「週刊新潮」は今週もやってるyo)。
コメンテーターから哂われていたWAN(Women's Action Network)の関係者はキレ気味。気持ちはわかるような気もしますが落ち着こう。
つーか、こういう反応を招くことはわかりきっているんだから、人の行動や運動を批判するとき笑っちゃダメだよパネラーさん方。
ところで、http://d.hatena.ne.jp/cmasak/20090629ですでにレポがあがっておりますが、これがあまりに偏っているとしか思えないので、その一部に対してレスをします。
そしたら金井さんが大して応答しようとしなかったので手を挙げて改めて聞いたんだけど、それも他の人の発言とかにまぎれてうやむやにされてしまった。
id:macska の突っ込みは良く聞こえなかった。
id:cmasak の質問も何を求めているのかいまひとつ明確にはわかりませんでした。
どちらも何となくはわかりますが、そもそもid:macska のこれまでの主張をフォローしていないと思われる金井先生に、その場ですぐに答えられるレベルまでブレイクダウンされているようには思えませんでした。
・伏見 x 細谷
細谷さんがなんだか知らないけど伏見さんイけるみたいな話(違)をしていて、『欲望問題』の中で書かれていたらしい「男文化も女文化もなくなってジェンダーからフリーになったら異性愛も同性愛もなくなり、白も黒も混じってみんなグレーになっちゃう」みたいなことに言及して、力強く同意している様子だった。でもこれってボクはどうかと思うんだよね。なんか、すべての根源は「ジェンダー規範」なんだ、と言いたがっている感じ。まずジェンダーがあって、そして、ジェンダーがあるからこそセクシュアリティの問題もありますよねみたいな安易な感じで、なんかムカつく。しかも「グレー」とか言っちゃって、今の段階では「白」と「黒」しかないんかい! みたいな
アレはわたしに言わせると、伏見の意見があまりに典型的なアンチジェンダーフリーのソレなので、それに対するFAQとして、「別にジェンダーフリーはジェンダー無くせなんて言ってないから」と答えたいのに、空気読めないイダさんが「いや俺はラジカルに無くせと言ってるよ!*2」とか言うから、いやそれには賛成できないという非常に捩じれた話なのですよ。
彼が『性別秩序の世界』を書いた彼なら、そのはず。
・寸劇
斉藤さんの発表で、男女共同参画推進の実践例としてなんだか知らないけどすごく広まっているらしい「寸劇」とやらの話が言及されました。もうなんか本当にやるせない気持ちになる内容らしくて(家族の価値を再評価しようとか)、ヒドい状態なんだろうなぁ。
寸劇は日本の官製運動業界では何十年も前からの伝統的な手法で、事業報告やレビューシートが国立女性教育会館の研究を通じてフィードバックされることで効果も確認されており、いまさら、寸劇が行われていること自体を哂うのは、端的に言ってコメンテーターの偏見です(ベテランなら知らないわけが無い)。
まぁ素人の手慰みですし、内容もひどいんでしょうね。
15年前に見た細谷さんの即興寸劇は面白かったですよ。
・「前向きに」=「性差別撤廃に向けて」?
オーツカさんという人がフロアから発言してらしたんだけれど、ここでも気になる発言が。オーツカさんのポイントは「ジェンダー」とかいう言葉の問題にとらわれて内部の争いに時間を無駄にかけていないで、共通の問題である「性差別」の撤廃に向かって前向きに(カジュアルに言えば)仲良くやるべきだ、というもの。なのでレキシコンとしての優先順位において、「ジェンダー」という言葉を使ったりしなくとも「性差別」で事足りるだろう、という。
補足しますが、前提としてそもそも行政に「女性差別」「女性問題」として把握されていたマターについて、「ジェンダー問題」を持ち込み、それを採用させたのは(東大などの)男性学者や関西メンズリブの力が大きく、これによって「(女)性差別」の問題という側面が薄れてしまった、と(ざっと)指摘しました。
ここらへんはid:yamtom と概ね見解を一にしていると思います。
でもこれがあたしにはあんまりよく納得出来なくて。というのも、「性差別の撤廃」がフェミニストの共通の問題だって、だれが決めたんだ?という疑問があるから。最初に「前向きに」ってオーツカさんが言ったときに「え?それってどっち向き?」と思ったらすぐにオーツカさん自身が「性差別の撤廃のために何が出来るか」をみんなで考えることだと補足したので、あらまぁそっち向きなのね、とびっくりしたというか。
決めてねー。
性差別だけ撤廃すればあとは社会運動にコミットするに足る理由がない、という人って、たぶんほとんどいないじゃないですか。外国人女性、障害者である女性、MTFトランスジェンダー女性、有色人種の女性、レズビアンの女性、バイセクシュアルの女性、在日コリアンの女性などの存在を考えたら、あたしの考えるフェミニズムは「女性」の問題に取り組む姿勢だと思っているので、明らかに「性差別の撤廃」では不十分。更にもっと迎合して言えば、「主婦」ひとつ取ってみたって、性差別だけじゃなくて資本主義とか新自由主義とかの抑圧的な経済体系とかからも迷惑被っているわけですよ。そして「女性だから、まずもっとも苦しんでいるのは性差別だろう」というのもおかしな話で、フェミニズムが最優先で性差別撤廃に走る、そしてそのために、その架空の目標への突っ走りを「邪魔」するようなやつは「空気読めない」「今は大切なときなのに分かってない」「勉強不足」「団結しようよ」「なんでそんなに批判的なの?」「内部で戦ってる場合じゃないでしょ」などなどと言われてしまう、というのは本当によくないと思うのね。
そんなこと一言も言ってねー。脳内展開し過ぎ。つーかオレに失礼過ぎるだろコレ。
わたしが言ったのは「仲良くやろうよ」です。ちゃんとした議論は仲良く出来るもの。
だから、性差別の撤廃が「前」向きなのだとあるフェミニストが言ったとしても、ほかのフェミニストにとってそれが「後」向きや「斜め」向きなこともあるわけで、そこの差異をもみ消すのは本当に自己中心的で嫌になります。
もみ消してねー。発言でも「この企画も総括としては意味があるかもしれない」とエクスキューズ入れといたお。
・フェミニズムを批判する人は、フェミニストであるわけがない
ソウル・ヨガ(イダヒロユキ) のイダさんは智美さんのことを「フェミニズムが分かってない」とかまで言っているのだけれど、それは本当に、上のオーツカさんの発言に対しても思ったことなのだけれど、なんでそこまでフェミニズム批判者をフェミニズムの枠から外に追いやりたいと思うのかが本当に分からない。
えー。いったい、わたしの発言をどう聞くとそういう印象に?
わたしは「内ゲバ自重」の上野千鶴子ステラトジーに心から賛同しているので、自分を含めフェミニストを任ずる誰かを「フェミニストではない」などと決めつけたりしたことは、この10年は一度も無いはずですが。
まるで会場が「山口斎藤チキ小山」陣営 対 「イダ女性学会陣営」に別れており、わたしがイダ陣営に属しているというミスリーディングを招くような表現はカンベンしてほしいです。
ちゃんと智美さんの批判を内部からの批判だとして受け取って、いかに批判を踏まえた次の一歩を踏み出そうかと考えるのが普通でしょ。
わたしは批判を受けとめ「ジェンダーフリーを使うのは反対」と述べました。
あと、わたしは発言の最初に言ったように市井の一ブロガーですので、「みなさん研究者でしょう」には「違います」と答えます。批判は慣れてるけどね。
P.S. 終了後、細谷さんに「ぜんぜん対話になりませんでしたね」と言ったところ、「プレ研究会でも論点多すぎるから2、3個に整理しようと言ったんだけどダメだった」とのこと。確かに、事前に集まったとは思えぬすれ違いっぷりでした。
P.S.2 チキさんはうわさ以上のいい男。嫉妬した!
P.S.3 プレ研究会についてこちらに報告あり。http://invoice.cocolog-nifty.com/invoiceblog/2009/06/mixi-ff1e.html
P.S.4 「男の料理教室」については、「こんな下らないことに施設が使われている」という例として哂いと共に挙げられていました。「男の料理教室」も15年前には先端的な取り組み(そもそも当時、「女性センター」に男性が立ち入ること自体が稀だった)だったわけですが。