不平文士の節酒日記~ADHD 死闘篇

アルコール使用障害とADHD に立ち向かいつつある技術系会社員のブログ

警察官との対話

会社の飲み会から帰る折、電車の中で熟睡し、通話用の携帯電話を無くしました。
ここまでは(わたしにとっては)よくある話なのですが、タチの悪いのに盗まれたらしく、悪用されてしまいました。
腹が立ったので、近所の警察署に届け出ることにしました。
わたしは国家の暴力装置を全否定するアナーキストではありませんから、困ったときに警察の手を借りることには、然程ためらいがありません。
夜の8時ころに警察署を訪れると、玄関では4尺2寸(約126センチ)の棒を持った小柄な女性制服警官が警備に当たっていました。
体育会系の簡潔な挨拶すると、直ぐに、巨大な眼鏡をかけ、バッタもののPoloジャンパーを羽織った長身の男性刑事を紹介されました。
警官は公務員で給料は安くないはずですが、わざわざ貧乏くさい雰囲気をかもし出しているかのようです。
フロアをいくつか上がり、取調室と思わしき個室に案内されます。
「知能犯係」というタグの貼られた3年前の東芝製ラップトップパソコンのPCカードスロットには、日立製の指紋認証システムがさされていて、本人以外は開けないようになっているようです。
さすがは警視庁、それなりに使うべきところにはお金を使っているようです。
住所氏名職業の次に、被害に遭った(盗難に気づいた)場所を聞かれました。
神奈川県内の東海道線某駅の名を告げると、住所わかんないよね、と聞かれ、さすがに知らないと答えると調べに向かいました。
ここまですでに10分以上経過しています。さらに、いったい、どんな方法で調べているか、ざっと30分待たされました。
インターネット閲覧用携帯を自宅に置いてきたことを強く後悔しました。
持参の新聞を読みつつ待っていると、部屋の横を通り過ぎる関係者がみな、ちらちら覗いていきます。
態度のでかい容疑者だと思われているのかしらん。
ようやく戻ってきた刑事は、事細かに紛失前後の状況を聞き込み、けっして早くはなく、しかもやたらと乱暴なタイピングで書類を作っていきます。
刑事が横に広げているノートには、大学生か何かが先輩後輩同士で喧嘩した件のメモが書かれていて、いきなり木刀で左腕を殴りつけられたとか書かれていました。
こちらははやく、なぜ紛失ではなく盗難だと気がついたのかといった本題に入りたかったのですが、こうして記録された事細かな内容が、取調べや罪状に響いてくるのだろうと妄想して何とか耐えました。
話が、わたしが眠りこけたまま折り返した東京駅のところまでくると、刑事はまた住所を調べに出て行きました。わたしは切れそうになりました。
今回は10分ほどで帰ってきて、また聞き書きが始まり、約5分後、刑事のタイプの手が止まりました。
そしておずおずと、
「あのぉ、今頃になってこんなことを言うのも何なんですが……」
起点の会社と、盗難に気がついた駅のある神奈川県の警察に通報したほうが、わたしの腹立ちも伝わるだろうし、その方がちゃんと捜査してもらえるのではないか(「いや勿論、我々もちゃんと報告は送りますが、言っちゃなんですがそれで終わりなんですよ」とのエクスキューズつき)と言うのです。
実は、わたしも席について話し始めた時からそんな気はしていました。
警視庁と神奈川県警といえば警察内でも最も仲の悪いもの同士と言われています。
しかも今回の件では静岡県警も絡んでくる可能性もあったのです。
しかしそれにしても、1時間もの時間を取調べに費やした後にその意見を口にした刑事さんの素直さに、腹が立つよりもちょっと感動しました。
よくよく見ると、疲れ切った様子です。警察は慢性的に人不足だと言いますが、若くも無い体で夜勤で詰めているのはきついこともあるのでしょう。
夜勤で待機中のところに(お互いに)無駄な仕事を増やしに来た相手に、彼はなんと4回も謝罪の言葉を口にし、最後には60度以上のえらい深々とした礼をされてしまいました。
わたしも礼を返し、時間を無駄にした腹立ちは他所に追い払いました。
遺失物センター以外の警察署を、こんなに気持ち良く立ち去ることが出来たのは、初めてのことです。
デモの盗撮に来る公安警察の刑事などを見ていると、人はどこまで下劣になれるのだろうかなどとも思うのですが、やっぱり礼儀正しい刑事さんもいるもんなんですね。
P.S.神奈川県警で話を聞いてくれた若い警察官は、盗難ではなく紛失にさせようと散々ゴネました(盗難なら書類作成の手間もあまりかからないし、何より自分たちはほとんど何も捜査しなくて済む)が、強い意志で盗難と認めさせました。
(もっとも、法科大学院にいる後輩によれば、告訴しない限りは捜査の進展などは教えてくれないみたいです)。
仕事をたらい回しにしてきた警視庁にはブツブツ言っていたものの、仕事を始めてからは流石に手早く、警察ですらも変わっていくんだなぁ、と感じさせられました。
パソコンはやはり警視庁より旧式で、インクジェットプリンタ共々、どうも私物っぽかったです。