シェルター
放射能が怖い。
目に見えないのに、勝手に家の中に入ってきて、それどころか体の中にまで入ってきて、
目に見えない力で、わたしや家族のからだを破壊する。
目に見えないから怖いのだろうか。
そう思い、わたしは放射能を目に見えるようにした。
正確には、検知した放射線を可視光に変換する装置をつくった。
世界は放射線に満たされていた。
わたしはより恐ろしくなった。
わたしは、シェルターを作ることにした。
いかなる核攻撃からも、原発事故からも、わたしと家族のからだを守ることのできる、核シェルターを。
放射線を遮断する頑丈な防壁と、いかなる放射能の侵入も許さないエアコンディションシステム、
充分な水と食料の備蓄と、リサイクルシステムを備えた、宇宙戦艦のような核シェルターを。
シェルターのためには大きな動力が必要だ。
それもコンパクトで、自立した、永続性のあるものが必要だ。
技術的な見地と入手性から考えて、結論は一つしかない。
わたしは小型の原子力発電炉を購入し、シェルターの中に備えたのである。
こうして、わたしは安心を手に入れたのだ。