不平文士の節酒日記~ADHD 死闘篇

アルコール使用障害とADHD に立ち向かいつつある技術系会社員のブログ

見捨てられる原子力発電

船瀬俊介ときたらもう一人、80年代後半を代表するアジテーター・広瀬「危険な話」隆を語らないわけにはいかないでしょう……と、思ったのですが、広瀬隆の不景気な顔を思い出したら書きたくなくなりました。アジテーターにはカリスマ性も必要ですね。
さて、最近ではかの「文芸春秋」あるいは「週刊エコノミスト」といった雑誌まで、特定の原発について安全性を問う記事を載せはじめているようです。標的は静岡県にある、中部電力浜岡原子力発電所です。
電力業界と言えば保守権力の本流中の本流ですが、その彼らがなぜ身内からこのような仕打ちを受けるのでしょうか。それは、浜岡原発が日本経済の心臓に突きつけられた短剣のようなものだからです。
まず、浜岡原発の真横には国道、東海道が走っています。東名高速や、JR東海道線とその新幹線も遠くない場所を通っている。太平洋ベルト地帯をつなぐ商工業の大動脈です。ここが止まれば経済の停滞はバブル崩壊の比ではない。
そして浜岡の近所には、機械加工・輸送機器生産の分野で世界最高の能力を持つトヨタやホンダ、スズキ、ヤマハといったメーカーの主力工場が密集しており、これらの工場の操業が停止すれば、輸出産業はまさに致命的な大打撃を受けることになります。
御用作家の麻生逝は、日本海側の原発北朝鮮の「特殊な部隊」((C)吉田秋生)がやってくるという小説を書いたそうですが、狙うんだったら絶対に浜岡がおすすめですよ!
そして何よりも浜岡原発は、活断層そばの海岸、東海地震がきたら激しく揺れて津波がやってくるような素晴らしいロケーションに建設されており、日本の原子炉の中でも飛び抜けて危険な場所で運転されているのです。(厨電の友人によれば、地盤の堅い場所を選んでいるそうですが、この地域ではどこに建ててもダメだろう)。
エネルギー不足の高度成長時代ならいざ知らず、最近は石油やガスもだぶつき気味で、小型発電機の性能も向上しています。初期投資が高くつき、厄介な放射性廃棄物もついて回る、うすらでかい原発は流行らなくなってきています。
また近年、国立大学の原子力関連学部に学生がぜんぜん集まらなくなっているという事実も、原発の将来に暗い影を投げかけています。いつか原子力に風が吹いても、教育を受けた有能な技術者は、簡単に増やせないからです。
これは余談ですが、昨今、北朝鮮問題に絡めて日本の核武装論が昂然と語られるようになっています。しかしその背景には、原子力業界の行く末に対する焦りがあるのは間違いありません……というくらいの穿った見方はいつも必要かな、と思います(なんか偉そうね)。